日本は世界に類を見ないスピードで高齢化が進行しており、2023年時点で65歳以上の人口は29.1%に達しています。一方、生産年齢人口は減少を続け、2040年には約5,978万人にまで縮小すると推計されており、深刻な労働力不足が不可避な状況にあります。
この構造的課題に対し、十分に活用されていない人的資源が存在します。それが、定年前後のミドル・シニア女性です。企業内でマネジメント経験や専門性を培ってきたにもかかわらず、キャリアの終点が「定年」とされる固定観念や、年齢・性別による無意識のバイアスにより、多くの女性が労働市場から退出を余儀なくされています。
同時に、XR(Extended Reality)を活用したリアルとバーチャルが融合する社会の進展により、「場所」「時間」「身体的制約」に縛られない働き方が現実の選択肢となりつつあります。KPMGの推計によれば、2030年に日本国内のメタバース市場は約11.5兆円に達し、そのうち1.6兆円以上が労働対価として流通すると見込まれています。また、KPMG UKの調査では、投資家の90%以上がメタバースを次世代のインターネットと捉え、仕事や学習体験への利用が増加すると予測しています。
しかし現在、日本国内のメタバースユーザーは一定の層が厚く、特に中高年女性にとっては、情報やネットワークへのアクセス、デジタルリテラシーの壁により参入障壁が高い状態にあります。「興味はあるが何から始めればよいかわからない」「相談先がない」という声が多数あり、結果的に機会損失が発生しています。
人生100年時代を迎え、シニア女性が再び社会の担い手となり、持続的に活躍するためには、XRを活用した新しい社会に適応し、主体的に関わることが必要です。しかし現実には、デジタル知識やメタバースの活用方法について学ぶ機会が限られ、伴走型の支援や具体的な成功事例の可視化が不足しているのです。この状況を放置すれば、社会全体で経験・知見のある女性人材が埋もれてしまい、日本の社会・経済の持続可能性そのものが損なわれる恐れがあります。
メタバースは、①年齢や身体的制限を超えて参加可能であること、②アバターによる心理的安全性があること、③共感的・関係性重視の対話や協働に適していること、といった特性を持ち、シニア女性が培ってきた傾聴力・調整力・企画力といったソフトスキルを最大限に活かす場となり得ます。これは、福祉と経済の交点に位置づけられ、「社会的包摂」「ジェンダー平等」「地方創生」「働き方の多様性」というSDGsの複合的課題に対する、新たな解決アプローチを提供します。
この課題に対する解決策として、MetaBloomはXRとメタバースを活用したシニア女性向けの伴走型リスキリング・キャリア再構築支援モデルを構築し、人的資本の再活性化と持続可能な社会の実現を目指します。